日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

〈自己表象〉の文学史──自分を書く小説の登場──

“自己表象”の文学史―自分を書く小説の登場

“自己表象”の文学史―自分を書く小説の登場

発行日 :  2002年5月25日
価 格 :  4,200円
ISBN :  4-87747-145-1

 [目次]
序 章 〈私小説起源論〉をこえて
  1 〈自分を書く〉ということ
  2 先行する評価群の整理
  3 〈私小説起源論〉の諸種
  4 批判と超克

第I部 〈自己表象〉の登場

 第1章 メディアと読書慣習の変容
 1-1 作品・作家情報・モデル情報の相関──明治三〇年代──
  1 『新声』と新声社の活動
  2 作家情報と作品の交差
  3 題材/モデル情報と作品の交差
  4 作家情報と題材/モデル情報

 1-2 「モデル問題」とメディア空間の変動──明治四〇年代──
  1 「モデル問題」の射程
  2 「モデル問題」の顛末
  3 「モデル問題」のもたらしたもの

 第2章 小説ジャンルの境界変動
  1 「自分を主人公として作つた」小説たち
  2 〈身辺小説〉の流行と〈自己表象テクスト〉の登場
  3 「蒲団」の読まれ方
  4 小説ジャンルの境界変動
  5 〈自己表象テクスト〉の出発

 第3章 〈文芸と人生〉論議と青年層の動向
  1 〈文芸と人生〉論議の推移
  2 青年たちの〈文芸と人生〉
  3 「人生観上の自然主義」という思想
  4 論議の行方

 第4章 〈自己〉を語る枠組み
 4-1 〈自我実現説〉と中等修身科教育
  1 〈自己〉への関心
  2 〈自我実現説〉とは何か
  3 中等修身科教育と〈自我実現説〉
  4 〈自己〉を語る枠組みの形成
  5 結び──〈自己〉・人格・芸術

 4-2 日露戦後の〈自己〉をめぐる言説
  1 「二潮交錯」
  2 〈自己〉論の三つの系統1 自己の文芸論
  3 〈自己〉論の三つの系統2 自己の描写論
  4 〈自己〉論の三つの系統3 自己の探求論
  5 〈自己〉論の隆盛と〈自己表象テクスト〉

 第5章 小結──〈自己表象〉の誕生、その意味と機能
  1 小結
  2 〈自己表象〉の再評価へ向けて
  3 〈自己表象〉の意味と機能

第II部 〈自己表象〉と明治末の文化空間

 第6章 自画像の問題系──東京美術学校『校友会月報』と卒業製作制度から──
  1 自分を描く小説と絵画
  2 東京美術学校西洋画科の卒業製作制度
  3 絵画の読み方──作品と「人格」
  4 〈自己〉への関心の広がり──校友会文学部と同時代の動向
  5 〈自画像の時代〉へ

 第7章 帰国直後の永井荷風──「芸術家」像の形成──
  1 ある〈肖像〉
  2 読書の慣習と新帰朝者
  3 『あめりか物語』から『ふらんす物語』へ
  4 「歓楽の人」荷風

 第8章 〈翻訳〉とテクスト生成──舟木重雄「ゴオホの死」をめぐって──
  1 〈ゴッホ神話〉の形成
  2 〈神経衰弱小説〉の系譜
  3 「ゴオホの死」における〈翻訳〉
  4 結び──〈翻訳〉を拡張する

 初出一覧
 あとがき
 私小説研究文献目録
 索引