プライヴァシーの誕生──モデル小説のトラブル史
新曜社、2020年8月12日、308頁
書評
- 図書新聞 2020年9月26日
書評 日比嘉高 著『プライヴァシーの誕生』@図書新聞 2020年9月26日号: 新曜社通信
- 毎日新聞 2020年9月26日
今週の本棚:『プライヴァシーの誕生 モデル小説のトラブル史』=日比嘉高・著 - 毎日新聞
- 日本経済新聞 2020年10月3日
プライヴァシーの誕生 日比嘉高著 私的領域 拡張の歴史を検証 :日本経済新聞
- 週刊ポスト2020年10月30日号
【平山周吉氏書評】私と公の意識の変化を辿る私小説トラブル史|NEWSポストセブン
- 日刊サイゾー 2020年10月26日
目次
序 章 モデル小説とプライヴァシー
1 モデル小説は何を引き起こすか
2 プライヴァシーは変化してきた
3 文学からプライヴァシーを考える
4 小説の言葉が行なうこと――転形、媒介、侵犯
5 本書の概要
第1章 モデル問題の登場――内田魯庵「破垣」の発禁と明治の社会小説
1 「破垣」の発禁と内務大臣末松謙澄
2 社会小説と諷刺――内田魯庵の文学
3 筆誅の時代とスキャンダルの公共圏
4 登場人物の類型的表現のもつ力
5 境界の構築と小説
6 発禁余波――内田魯庵の表現および文学者の感覚の変化
第2章 写実小説のジレンマ――トラブルメーカー島崎藤村と自然主義描写
1 藤村伝説
2 「はじめて産れたる双児の一」の発禁――「旧主人」
3 一九〇七年のモデル論議
4 モデル論議からみえる明治末の〈私的領域〉
5 文学空間の変化――情報編成、読書慣習、窃視の好奇心
6 〈藤村伝説〉の亀裂――「突貫」
7 小説の暴力、好奇心の暴力――「新生」
第3章 大正、文壇交友録の季節――漱石山脈の争乱Ⅰ
1 大正期の文壇交友録小説と芥川龍之介「あの頃の自分の事」
2 第四次『新思潮』派の紛擾と菊池寛「無名作家の日記」
3 芥川の仕掛けたもの――交友録小説と文壇の鳥瞰図
4 〈閉じた文壇〉論と私小説論
5 〈通俗〉への通路をさぐる
第4章 破船事件と実話・ゴシップの時代――漱石山脈の争乱Ⅱ
1 〈芸術〉か〈通俗〉か
2 久米正雄「破船」の戦略
3 告白・実話・ゴシップ
4 松岡譲「憂鬱な愛人」の受難
5 加速する大衆文化時代
第5章 のぞき見する大衆――『講談倶楽部』の昭和戦前期スポーツ選手モデル小説
1 問題のモデル小説
2 水泳選手の受難――近藤経一の「傷ける人魚」
3 『講談倶楽部』の「実話」路線とスターの登用
4 大衆文化へと浸透するモデル小説
5 野球狂時代
6 三原脩と小説「青春涙多し」
7 ヒーローは墜落する
第6章 〈プライヴァシー〉の誕生――三島由紀夫「宴のあと」と戦後ゴシップ週刊誌
1 「宴のあと」、訴えられる
2 なぜプライヴァシー権は要請されたのか
3 プライヴァシーの誕生と拡散
4 プライヴァシー論議と文学の自画像
5 作品と読者
6 テクストは知っていた?
7 公の裸体
第7章 〈芸術性〉をいかに裁くか――昭和末、高橋治「名もなき道を」の勝訴
1 唯一の小説家側勝訴例
2 高橋治「名もなき道を」とその訴訟
3 モデル小説の〈芸術性〉をどう評価するか
4 〈芸術性〉をめぐる法学者たちの見解
5 二つの〈芸術性〉1――〈虚構化〉
6 〈虚構化〉と読者
7 二つの〈芸術性〉2――〈芸術的価値の高さ〉
8 法の場における〈芸術性〉の再規定のために
第8章 モデル小説の黄昏――平成、柳美里「石に泳ぐ魚」のデッドエンド
1 「石に泳ぐ魚」裁判の経緯
2 「時代の流れ」――法律家、文学者の分裂
3 報道被害と個人情報の登場
4 「宴のあと」のあと
5 読むことの倫理、そして図書館の自由
終 章 ネット社会のプライヴァシーと表現
1 プライヴァシーの変容
2 創発する監視網
3 自己情報のコントロールは可能か
4 ネット時代の表現とプライヴァシーモデル問題関連年表
事項・作品名・人名索引
- 作者:日比嘉高
- 発売日: 2020/08/17
- メディア: 単行本