日比嘉高研究室

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日本政府がMITやジョージタウン大などの日本研究に18億円出すことに決めたらしい件

日本政府は、増大する中国と韓国の影響力に対抗する「ソフト・パワー」政策の一環として、ジョージタウン大、マサチューセッツ工科大学(MIT)を含む海外の9つの大学の日本研究に、1500万ドル(約18億円)以上の予算を付けることにした、とのことです。

ソースは、The Japan Times の記事「To counter China and South Korea, government to fund Japan studies at U.S. colleges(中国と韓国に対抗するため、日本政府、米国の大学の日本研究に資金援助)」です。

以下骨子を紹介します。

  • MITとジョージタウン大は、2015年度の外務省予算からそれぞれ500万ドルずつを受ける予定である。
  • 国際交流基金(Japan Foundation)はまだ未確定である米国かその他の地域の6つの大学に、2500万円ずつを割り当てる予定である。
  • これは2014年度補正予算でコロンビア大に支出された500万ドルに続く措置である。
  • 財務省の担当者は「安倍政権は日本の歴史問題が米国において適切に理解されていないという危機感を持っており、日本研究が消え失せてしまわないために出資することを決定した」と述べた。
  • この担当者者は、このプログラムによって雇用される教員が間違いなく「適切」な人材であることを精査すると述べたが、外務省のスポークスマンは、日本政府がこの資金援助によって教員の新規採用プロセスに関わるというような条件は付されていないと述べている。
  • 多くの日本の政治家と当局者は、中国と韓国の積極的な外交戦略に後れを取っていることを憂慮している。
  • 外務省はソフトパワー戦略を増強するため、外務省は2014年に700億円の補正予算を獲得し、2015年の当初予算では前年比200億円の増額を得た。これらの予算は海外の大学の日本研究プログラムや、「日本ブランド」を宣伝するための「ジャパンハウス」設立のために使われることになっている。
  • 政府は同時に日本の戦時下に関する海外の教科書の記述ほかの、政府が不正確だと考えることについてもターゲットにしている。
  • こうした日本政府の努力に対しては、マグロウヒル社の教科書の問題に関する米国の学者たちの抗議声明などすでに反発が起こっている。
http://www.japantimes.co.jp/news/2015/03/16/national/to-counter-china-and-south-korea-government-to-fund-japan-studies-at-u-s-colleges/#.VQo4-MscRLO

私のような日本在住の日本文学・文化研究者にとって、いろいろ思うところの多い記事であります。

こういう政府の思惑に、一人の研究者として、あるいは関係学会として、そして海外の研究者たちとの連携の問題として、どう向き合うか。

「危機」なのか、「チャンス」なのか。現場でできることは何なのか。考えさせられます。