日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

最近いただいた本

前回の「最近いただいた本」の詳細が紹介できていないうちに、次を載せねばならないという状況。ご恵贈下さった皆さん、すみません。

鳥木さんの博士論文。リアリズムを主軸に、佐多稲子葉山嘉樹中野重治、組織論、小林多喜二窪川鶴次郎ほかのプロレタリア文学運動を論じる。リアリズムを、作家が社会と結ぶ創造的な関係を規定するイデオロギーとして捉えているところが、論考の根幹になっている。気鋭の若手による、近代文学研究の世界でも久々のプロ文論の単行書です。

南洋文学の生成 訪れることと想うこと (新典社研究叢書 242)

南洋文学の生成 訪れることと想うこと (新典社研究叢書 242)

南洋文学の文学史、と言っていいと思う。山田美妙、押川春浪に始まり、中川与一、芥川龍之介金子光晴、森三千代、鶴見祐輔、童話、俳句、短歌などなど。質量ともに、今後南洋研究をする人は必読の一冊。

佐幕派の文学 「漱石の気骨」から詩篇まで』平岡敏夫
おうふう
2013/09/10

平岡先生の「エッセイ集」(帯より)。先生には『佐幕派文学史福沢諭吉から夏目漱石まで』というご著書がつい最近あるので紛らわしいが、新著である。漱石や透谷、荷風、啄木らをめぐる文学(史)エッセイに、最後の方には「佐幕派詩篇」「漱石詩篇」「荷風詩篇」が収録。詩です。平岡先生の「二次創作」です! ちなみに新島八重についてのエッセイもあり。

松村良さん、柳瀬善治さんよりいただく。昨年九月に龍谷大学で行われたシンポジウムの書籍版。出席したかったのにできなかった会だったので、こういう形にまとまってすごく嬉しい。メディア、上海文化、南洋・台湾文化、北方文化と大別されているが、多岐にわたる、密度の濃い論考が並ぶ。しっかり勉強せねば。

広く資料を集め直されたようで、十重田さんらしい緻密なお仕事。検閲や占領下の問題など、十重田さんの最近のご関心の強みも生かされている。図版、年表、参考文献、どれも充実。現時点における岩波茂雄の評伝の、決定版だろう。こういう仕事を当たり前のようにきちんと果たせる研究者は、すごい。