日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

最近いただいた本

更新が滞っており、ご紹介が遅れたみなさんには申し訳ありませんでした。御礼状も、これからであります。。。すいません。

夏目漱石の時間の創出

夏目漱石の時間の創出

博士論文をもとに出版された漱石の長編小説の論考集。小説の枠組みを作る「巨視的な時間」ではなく、登場人物の識閾下でうごめく時間に注目する。野網さんは、先日の岩波の『文学』の漱石「文学論」の特集にも書いていらっしゃった方。きっちりした調査と、理論的な関心と、小説の詳細な読解が噛みあわさった質の高い論考が並んでいる。

エスニシティを問いなおす―理論と変容

エスニシティを問いなおす―理論と変容

関西に拠点を置く移民研究会、マイグレーション研究会の共同研究論文集。(この共同研究には参加していませんが、私も籍を置かせてもらっています。)エスニシティの概念と問い直す第一部と、エスニシティの様々な変容のあり方を分析する各論が並んだ第二部から構成される。

物語の法則―岡本綺堂と谷崎潤一郎

物語の法則―岡本綺堂と谷崎潤一郎

千葉先生がお送り下さった。岡本綺堂谷崎潤一郎についての論文の他に、千葉先生が発掘された岡本綺堂の処女作「盲心中」の全文復刻、および同じく綺堂の単行本未収録で原稿から新たに起こされた「赤い杭」の全文が解題付きで収録されている。版元の青蛙房岡本綺堂の養嗣子である岡本経一氏の創業にかかる出版社。序章には綺堂と谷崎の処女作を巡った比較論考がある。世代の違う研究者の論文は、背景となる情報の質も量も入手経路も違うので、とても勉強になる。

遠い声―ブラジル日本人作家 松井太郎小説選・続

遠い声―ブラジル日本人作家 松井太郎小説選・続

以前ここでも紹介した、ブラジル在住の日本語作家松井太郎の第二小説集。西成彦さん、細川周平さん編。編者よりお恵みいただいた。第一小説集の『うつろ舟』が猛烈に面白かったので、今回も楽しみである。この集の解説は、いしいしんじ氏が書いているのにも注目。

中原中也―メディアの要請に応える詩

中原中也―メディアの要請に応える詩

博士論文をもとに出版された中原中也の論考集。渡邊さんからお送りいただいた。詩集や詩人自身を起点として誌を読み解くのではなく、「「雑誌」という“別の力学”が働く空間にある誌を分析する」(p.13)をめざす。『白痴群』『生活者』に注目する第一部と、『歴程』『四季』に注目する第二部からなり、全九章の論考が並ぶ。私は誌の分野には暗いので、誌雑誌の特徴もあわせて考察した本書はありがたい。