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日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

TPP著作権延長問題に関する北米日本研究資料調整協議会による意見書

北米で、日本語研究資料を扱う非営利団体が、内閣官房 TPP政府対策本部に意見書を出しています。著作権保護期間の延長は、外国における日本文化研究にも大きな悪影響を及ぼす懸念があるということを、広く知って欲しいと思います。

同協議会の許可を得ましたので、全文を転載します。同協議会のFBページでも読むことができます。

NCC chair Kuniko Y. McVey sent a letter to the Japanese government's TPP office to express NCC's concerns on possible extension of Japanese Copyright from 50 to 70 years. The whole statement is below. (Note: The views expressed here are hers as a chair of NCC and do not reflect those of her employer.)

Sent: Thursday, August 15, 2013 2:07 AM
To: jouhou.tpp2@cas.go.jp 内閣官房 TPP政府対策本部
Subject:TPP意見 北米日本研究資料調整協議会

1.組織・団体名:北米日本研究資料調整協議会 North American Coordinating Council on Japanese Library Resources (NCC)
2.代表者名または意見提出者名及び連絡先電話番号
代表者名: マクヴェイ山田久仁子 Kuniko Yamada McVey
3.提出意見 (対象分野) 知的財産、特に著作権
私ども 北米日本研究資料調整協議会(以下 NCC )は、北米で日本研究資料をより多くの学生、 研究者に提供することを使命とした非営利団体で、日本研究資料担当の大学図書館員及び日本研究者がボランティアでその活動を支えています。
このたび TPP の交渉の中で、日本の著作権が現行の死後 50 年から、米国で施行されている 70 年近くに延長される可能性が、日本経済新聞等で報道されています。もし日本の著作権が 70 年 に延長されますと、日本国内及び海外の日本研究に多大な影響を及ぼす事が懸念されますので、 現行の 50 年をむしろ世界のスタンダードにする方向を望んでおります。以下にその理由を記します。
 日本の著作物は、国立国会図書館で責任を持って管理保存されている中でデジタル化され、著作権を遵守しながら「近代デジタルライブラリー」を通じ一般公開が進められています。また 著作権が失効した日本の作品をテキスト化して、インターネット上で公開している「青空文庫」はいまや大変信頼のおける日本語テキストとして、国内外の幅広い利用者に支持されています。
 こうしたコンテンツの公開・提供によって、日本のみならず世界の人々がいつでも、どこからでも著作権が失効した日本の知的遺産に自由にアクセスできるようになりました。物理的に日本語文献の収集管理が困難な場所で日本研究を志す学生、研究者、一般読者にとって、これは かけがえの無い励ましであり、無くてはならない研究資料です。ちなみに 2012 年の国際交流基金の調査では北米に 1693 名の日本研究者が存在し、287 の日本研究プログラムがありますが、 1万冊以上の日本語蔵書がある図書館は 45 館に過ぎません。また日本語教育や、日本文学を教える場で「青空文庫」は 広く活用されています。特に 100 年以前に活躍した作家の本は、絶版がほとんどで電子版が無ければ、読めない場合も多くあります。
 現行の著作権が 20 年延長されますと、来年解禁になるはずの著作物が 20 年経なければ、インターネットでの自由な閲覧ができません。この 20 年の凍結は日本研究に有形無形の重大な影響を及ぼすでしょう。言うまでもなく公開コンテンツの絶対量が 20 年据え置かれるわけで、「青空文庫」などに支えられて広がって来た日本文学の読者や日本語履修者を失望させ、日本研究に取り組むインセンティブもかなりそがれるでしょう。待望していた出版物の公開が 20 年遅れ ることになると、研究主題を変えざるを得ない研究者も出てくるでしょう。また、世界中の公開情報量の加速度的な増加の中での 20 年の待機期間は、 相対的に良質な日本情報の量を大幅に減らし、同時にインターネット上の日本情報のプレゼンスも激減します。潜在的な日本作品の読者獲得機会を失う事を、北米の日本研究の発展を願う立場から大変危惧しております。海外の日本の理解者を増やす事は日本の国益にもかなっている点をぜひとも考慮下さることを望みます。
 以上、北米の日本研究を支援する立場から、日本の著作権について私どもの意見を述べさせていただきました。ご傾聴を感謝いたします。

https://www.facebook.com/NCCJapanInfo/posts/503810106365888