日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

ひさびさの対面学会

昨日、ひさしぶりに小規模の学会が、対面とオンラインの併用であった。私はコメンテータを引き受けていたので、会場まで出向いた。京都での開催。

対面、すごくいいなと再確認してきた。どんなところがよかったか。

「ついで」がいろいろできる/起こる
久しぶりに会った色んな人に挨拶ができた。近況を聞き、こちらも話した。研究プロジェクトのことを小耳に挟み、刺戟をもらった。そういう細々した予期せぬ出会いや交渉の量が格段に多い。

学会の場そのものが複線的
これは個人目線で❶に書いたことの、学会運営目線での言い直しかもしれないが、色んなことを同時に生起させられる。打ち合わせをする人、旧交を温める人、雑談をする人、裏方仕事をする人、色々色々。オンライン学会は、集中の空間だが、対面の空間は懐が深い。

「人」の情報量が多い
私たちは、人について重要なところ、重要でないところ、たくさん情報を集めているんだなと再認識する。発表内容そのものはオンラインで問題ない。しかしその他に、服装や雰囲気や身体のサイズ感や身振り挙動、持ち物、さまざまなところを意識しないまま目に入れている。
これらのことは、付随的なことで重要ではない。重要ではないが、私たちのコミュニケーションや記憶(印象)を深いところで下支えしていると思う。

そしてそういう蓄積が、人間関係の形成に中長期で影響する。そしてその人間関係は、自分の支えになっていく。

移動が楽しい
わざわざ会場に行くこと。新幹線を予約し、地下鉄と在来線を乗り換え、のぞみに乗り、駅の混雑の中、昼食を買う。駅を出て街を歩く。川べりに座り込んで昼食を食べる。近くのカフェに移動して川と山を見ながら学会の予習をする。

帰り道は、久振りにお目にかかったこの分野の大先輩の先生と偶然一緒になる。坂を二人で雑談しながらゆっくり下っていく。学会のことや、通り道にある寺や御陵のことを話す。
先生と別れ、ぶらっと夕食と一人打ち上げのために、お店に入る。クラフトビールが(なぜか。なぜだろう)あるので、飲む。

   *
とまあ、こんな感じで、対面やっぱり自分には大事だな、と思いながら帰った。
もちろん、オンライン併用も大事である。簡単に会場に行けない状況の人が、学術報告にアクセスできる利便性はとてつもなく大きい。これは後退させてはいけない一線だと思う。これは地方在住者として強く言いたい。

しかし対面で参加すると、オンライン学会がいかに多くの経験をそぎ落としているかを痛感する。両者の「いいとこ取り」を、持続可能なかたちで続けていくことが、これからの学会運営には必要だろう。

ちなみに言うと、詳しい数字は把握していないけれど、昨日の学会も、オンライン参加者が対面参加者を上回っていたと思う。いま、大学で併用授業をすると、放っておくとこうなる。おそらく学会も、今後こうなるかもしれない。

「併用」というとき、知らず知らずのうちに、対面を主、オンラインを従、と考えている気がする。しかし、もしかしたら、今後の参加実態はその逆になるかもしれないわけだ。

今月末、私の分野では一番大きい学会が、対面とオンラインの併用で開催される。さて、参加の比率はどうなるだろうか。