日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

大学院説明会 2020年7月

名古屋大学大学院人文学研究科の大学院説明会は、オンライン(動画やメール、ZOOM等)で行われます。私や飯田祐子さんの所属する日本文化学講座の受験をお考えの皆さんは、ぜひお立ち寄り下さい。

日本文化学講座の個別相談もあります。

  • メールでの受付期間は7月1日~7月15日。
  • ZOOMによる講座説明会が7月17日19時~20時。

ZOOM説明会の出席希望者は、事前の申請が必要です。下のリンク先、「個別相談について」で詳細を確認して下さい。

www.hum.nagoya-u.ac.jp

統制経済と書物流通──帝国の国策書籍配給会社

『人文学研究論集』名古屋大学、第3号、2020年3月、pp.335-350

Title: Book distribution and the controlled economy: On the national book distributors of the Japanese Empire

後日、以下の名古屋大学附属図書館のリポジトリで、全文が読めるようになるはずです。
nagoya.repo.nii.ac.jp


要旨
アジア太平洋戦争期の経済統制については、主に経済史の分野において、統制の思想的背景や製造部門を中心とした生産や流通・配給制度の実態に関する研究が積み重ねられてきた。一方、出版文化史においても、検閲や言論統制、戦争協力、用紙統制などに関してさまざまな蓄積があり、本論で論じる書物流通の国家統制に関しても日本および「満洲国」に関して考察が行われてきた。しかしながら、出版統制とその外枠である統制経済全般に関わる国家的施策との関係は、ほとんど考察されていない。この論考では、統制経済総体における書物流通の位置付け、国家の統制と民業である取次業や小売業との関係、そして配給という仕組みと「ビジネス」との差異という三点を焦点としながら、戦時期の植民地帝国日本における書物の配給統制のあり方を再考する。本論の考察の結果、日本出版配給株式会社(日配)や満洲書籍配給株式会社(満配)などといった出版物の一元的配給会社と、統制経済の各施策との関係が明らかにされたほか、国家統制の動きと平行するように自ら業界有力組織による統制を求める動きがあったことを指摘した。また先行研究のいう日配が戦後の書物流通体制を準備したという見取り図には、日配が「会社」ではあったものの営利自体を目的としていなかったという点において、大きな留保が必要であることを論じた。この成果は、引き続き戦時下における小売書店の統制(企業整備)の歴史につなげて考察される必要があり、また「満洲国」や朝鮮半島、台湾、樺太、南洋などにおける統制経済と書物流通の関係へも広げていくことが可能である。

Abstract:
distribution in the controlled economy as a whole, the relationship between the national control of economy and private businesses such as wholesalers and retailers of books, and the difference between the national system of haikyū (distribution) and profit-seeking business. I clarify the connection between national policies concerning the controlled economy and the establishment of book distribution companies such as the Japan Publication Distribution Co., Ltd. (Nippai) and Manchuria Book Distribution Co., Ltd. (Manpai). Additionally, I demonstrate that, paralleling national economic controls, important publishing business organizations actively sought to create industry controls. Lastly, I argue that because the accepted narrative which positions Nippai as the precursor to postwar book distribution systems requires serious reconsideration because it is based on the misapprehension of Nippai as a profit-seeking business.

Keywords:
controlled economy, book distribution, Japan Publication Distribution Co., Ltd. (Nippai), Manchuria Book Distribution Co., Ltd. (Manpai), distribution (haikyū)

キーワード:
統制経済,、書物流通、日本出版配給株式会社(日配)、満洲書籍配給株式会社(満配)、配給

「満洲」の本屋たち──満洲書籍配給株式会社成立まで

『Intelligence』20世紀メディア研究所、第20号、2020年3月、pp.102-117

Title: Bookstores in Manchuria before the establishment of Manchuria Book Distribution Co., Ltd.

和文要旨:
この論考では、「満洲」における日本語書籍の小売史を考える。主たる対象となるのは日本語の書物を扱った書籍店である。とりわけ、これまでほとんど手をつけられてこなかった「満洲国」成立以前の小売書店の歴史を考えている。導入部のあと、第2節において日露戦争以後の小売店の進出状況を確認し、第3節で満洲全域における小売書店の分布を見渡した。第4節で満洲書籍(雑誌)商組合の成立とその働きを論じ、第5節で小売書店の営業のさまを書店登場の時期および地理的な分布の状況に目を配りながら概観した。第6節では、各小売書店およびその店主のプロフィールを一瞥した。以上は、満洲地域(ここでは関東州を含む)、そして「満洲国」の日本語文化を規定した社会的基盤を考える基礎的かつ重要な作業であり、出版文化史のみならず、広く満洲の知的文化の広がりに関心を持つ歴史的な研究に対して、広範な知見を提供するものと考える。

English abstract:
This paper considers the history of Japanese retail bookstores in Manchuria, focusing on Japanese-language books, particularly before the establishment of the “Manchukuo.” After the introduction, Section 2 explores the state of retail stores after the Russo-Japanese War, and Section 3 surveys the distribution of retail stores across Manchuria. Section 4 discusses the foundation and function of the merchant union of bookstores in Manchuria, and Section 5 gives an overview of the retail bookstore business, paying attention to the time of bookstore establishment and geographical distribution. Section 6 presents a quick look at the profiles of bookstores and their owners.

f:id:hibi2007:20200504150038j:plain

大幅更新 「近現代文学研究関連の情報収集」

ほぼ2年ぶりぐらいに、自分自身のウェブページ「近現代文学研究関連の情報収集」と「[演習発表用]文献の集め方」を更新しました。

park18.wakwak.com
park18.wakwak.com

どちらも、近現代を中心とした日本文学研究に関わる文献収集のためのリンク集とその解説のページです。前者がフル・バージョンで、後者は学部の授業を念頭に置いた、その簡易版という位置づけです。

今回の更新では、

  • リンク切れの修正
  • デザインの刷新
  • 「その他の関連資料を探す」の追加をはじめとした新情報の追加
  • ページタイトルを「近代」から「近現代」に変更

を行っています。

このページは、更新履歴を見ると、2001年に作ったようです。もう20年近いのですねぇ。そりゃ、いろいろ変わるはずですね・・・。ちょっといろいろ思い出したから、twitterにつぶやくかな。

作家の進化を示す欲張りで充実した連作小説(李琴峰『ポラリスの降り注ぐ夜』書評)

『すばる』42巻5号、2020年4月6日、pp.318-319

すばる五月号に、李琴峰さんの『ポラリスの降り注ぐ夜』の書評を書きました。
出だしはこんな感じ。ぜひ手に取ってみて下さい。

 セクシュアル・マイノリティたちの生と性をめぐる物語と言ったらよいのだろうか、それとも台湾出身の越境的作家による日本語文学と呼べばよいのだろうか、あるいは〈ポラリス〉というレズビアン・バーを舞台とした短編連作小説とまとめればよいのだろうか、むしろ新宿二丁目という街の物語といっそ称してみてもよいのだろうか。そのいずれでもある『ポラリスが降り注ぐ夜』は、小説家李琴峰の最近作だが、おそらくは彼女の初期を代表する一作になる。力の入った良作だ。
 そのおもしろさをどう表現すればよいだろうか。筋や謎解きによるいわゆるエンターテインメント系のおもしろさではないし、言語の表層で勝負する文体のおもしろさでもない。意外かもしれないが、「ガイダンス系」のおもしろさ、と表現するのがいいかもしれない。

李さんはコロナ禍まっただ中の今、この本の売り上げの一部を、新宿二丁目のお店に寄付するという取り組みもされています。
note.com

The New York Times にコメントが載った件

Twitterやネットで書き散らしていると、たまに面白いことが起こります。

「情の時代」に棹を差す──あいちトリエンナーレ2019、毒山凡太朗、タニア・ブルゲラ、大浦信行、袁廣鳴

『JunCture』11号、2020年3月、pp.186-189


あいちトリエンナーレ2020のレビューです。以下から全文がご覧いただけます。

doi.org