日比嘉高研究室

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東京大学「軍事研究解禁」ガイドライン改訂で政治的圧力はあったのか

東京大学は狙われた可能性がある

16日の産経新聞の報道が火を付けた東京大学の「軍事研究解禁」をめぐる騒動は、東大総長の声明文書と、『朝日新聞』への大学広報による否定コメントによって、とりあえず今回は一件落着ムードのように感じられるが、それはまったく違う。私は以下の文章で、次のことを主張する。

  1. 東京大学大学院情報理工学系研究科の「科学研究ガイドライン」の改訂作業は、政治的な圧力または企図によって行われた可能性がある。
  2. 1.の嫌疑がある以上、同研究科は、この改訂作業について説明する責任がある。
  3. 文章の内容として問題が大きいのは、同研究科の改訂ガイドラインではなく、むしろその後の総長声明かもしれない。
  4. 大学の「軍事研究禁止」の原則は、いま軍事力を上げたい政治勢力と、経済的イノベーションを進めたい経済勢力から挟まれて完全にターゲットになっている。
  5. 科学技術の「デュアル・ユース」に関するリテラシーを上げないと、理系研究者も文系研究者もそれ以外も、4.の勢力に太刀打ちできない。単純に軍事研究=即・問答無用で反対、みたいな脊髄反射的論じ方だと、推進派にはもちろん科学研究の現場にも、そして世論にも声が届かない。


なお、この件については、科学技術社会論が専門の平川秀幸さん@hirakawahさんのツイートがたいへん参考になった。御礼申し上げます。一連のツイートがまとめられているので、ぜひご参照いただきたい。「2015.1.16 報道「東大が軍事研究解禁」関連ツイートまとめ 」http://togetter.com/li/770828?page=1

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