日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

文化資源とコンテンツを文学研究的に論じるための覚え書き――文豪・キャラ化・参加型文化

日比嘉高、『横光利一研究』17号、2019年3月、pp.63-74、研究展望

日本近代文学館で行われている「新世紀の横光利一」展に合わせて、『横光利一研究』(17号、2019)が刊行されています。特集は「文化資源(コンテンツ)としての文学」。私は次の研究展望を載せています。

概要(を説明した「はじめに」部分の引用)

1.はじめに──文学の生態系(エコシステム)の変化
 この覚え書きで私は、次のことを考えてみたいと思っている。一つには、「文化資源」および「コンテンツ」という言葉を導きに、文学の生態系(エコシステム)で起こっている変化を捉えることである。この二つの言葉の来歴、含意、射程を確認した上で、付随して「プラットフォームの横断性」や「参加型文化」「キャラクター」についての検討を行いたい。そして最後に、生態系の変化のなかで文学研究もまた変わっていくと考え、その展望を探ってみよう。文学作品を論じる理論的枠組みは、「作品」から「テクスト」へと動いたが、文学の創出と享受に関わる主体と環境の相対としての生態系の変化を視野に入れた場合、「作品」から「コンテンツ」への移行を検討しうるかもしれない。また昨今の「文豪」への注目は、あらためて、キャラ化されたものを含む「人」への関心の強さを我々に示しているようにも思われる。〈作者の死〉以後の作家そして登場人物のあり方を考える必要がありそうだ。

本文では、次のような節を並べています。

2.「文化資源」を考える道具立て
3.「コンテンツ」を考える道具立て
4.コンヴァージェンスと参加型文化
5.生態系の変化の中で
6.「キャラ化」という文脈最適化
7.おわりに──生態系の変化の中で文学研究は何を行うのか

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横光利一研究、17号、2019