日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

マリヤンの本を追って──帝国の書物ネットワークと空間支配

日比嘉高「マリヤンの本を追って──帝国の書物ネットワークと空間支配」、河野至恩・村井則子編『日本文学の翻訳と流通──近代世界のネットワークへ』勉誠出版、2018年1月12日、pp.243-259

【概要】
第二次世界大戦以前の、内地外地を結んだ書物流通網は、どのようなものだったのか。本論では、中島敦「マリヤン」を横糸にしながら、ネットワークと空間に関する理論的な考察を行う。植民地支配下における「空間の生産」、ネットワークの複数性、均質化と差異化、異民族が出会う接触領域、抵抗のネットワークなどについて検討する。

この論考は以下の本に収められています

河野至恩さん、村井則子さんの編で、三つの軸をもつ論文集です。すなわち、(1)日本近代文学の欧米語への翻訳史の再検討、(2)日本語テクストにおける日本・東洋・アジアのイメージの形成、(2)20世紀前半の東アジア・東南アジアにおける文化テクストや書物の翻訳・流通。
個人的には、自分自身の関心に近い、

  1. ユートピアへの迂回路―魯迅・周作人・武者小路実篤と『新青年』における青年たちの夢」アンジェラ・ユー(A・ユー/竹井仁志 訳)
  2. 「ミハイル・グリゴーリエフと満鉄のロシア語出版物」沢田和彦
  3. 「日本占領下インドネシアの日本語文庫構築と翻訳事業」和田敦彦

の各論文に教えられるところが多かったです。
本は、2018年年明けぐらいから、書店に並ぶはずです。ぜひ。

http://bensei.jp/images/books/22682.jpg
bensei.jp