日比嘉高研究室

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マイナンバーを届出したくない件――民間利活用のロードマップを見てみよう

マイナンバー、「届出して下さい」というお願いを今年お仕事をした某所からいただきましたが、お断りしました。

納税のズルを許さないとか、行政業務が効率化するとか、たしかにメリットもあるようです。が、マイナンバーの「利活用」ロードマップを見ると、これで儲けられるよとか、これで国民(在留外国人も)一元管理だぜとか、そういうのがみえみえで、むしろホントの目的はこっちでしょ、それってITディストピアだよね、と思うので、私は「やばいよこれ」と言い続けます。拒否しても無駄だし、仕事相手に多少の面倒をかけてしまうのは百も承知ですが、「気をつけた方がいいよ」と言うために、今年も拒否を明言しておきます。

マイナンバーの「利活用」の先にどんな世界が待っているか、ITディストピアの詳細なロードマップをご覧下さい。首相官邸の「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部) マイナンバー等分科会」謹製の「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ(案)」です。
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マイナンバーの民間「利活用」

拒否できない・逃げられないにしても、この問題には関心を持った方がいいと思うのです。この先、どんどん「利活用」が広がります。

つい先日も、全国の公立図書館でマイナンバーカードを使えるように、という「それって誰得?」なニュースが流れました。総務省は、今後色々な公的施設でも広げていく意向です。
www.nikkei.com


平成28年1月からはマイナンバーによる「公的個人認証」(要するにマイナンバーを使った政府系機関による個人認証)が、「民間開放」される(認証を受けた民間企業でも使えるようになる)という大きな「前進」がひっそりと行われていたりします。

「個人番号カードが提供する「新・公的個人認証」の破壊力」(ITPro)
itpro.nikkeibp.co.jp


マイナンバーカード(電子証明書)を活用する公的個人認証サービスの利用を行う民間事業者として、初の大臣認定を実施」(総務省
www.soumu.go.jp

「この公的個人認証の民間開放」は、コメント欄掲載の政府のロードマップでは、はっきりと「イノベーションの鍵」と言われているものです。

最大のセキュリティ・ホールは「人」

拒否していて、周囲から意見としてもらうのは、「拒否できる人はいいですよね」という声。解雇されたら困る人とか、職場で拒否できない状況にあるとかいう、つまり雇用が不安定だったり、職場が難しかったりする人ほど、この仕組みに逆らえない状況があります。若い人のアルバイトや非常勤、契約社員などでは、そうだろうと思います。若い世代が使うことに慣らされていくと、次第に社会的な抵抗感も低減していくのでしょう。

この制度はすごく広がりが出そうな一方、「ワンストップ」とか「ワンカード」を掲げて、一元集約型になっています。マイナンバーについて知識があったり、警戒感がある人はいいと思うのだけれど、よくしらない、とか、なんかよくわからんけどいろいろ使う、という人は、この先大丈夫なのかなぁと思います。

それでできることが増えれば増えるほど、それでできる悪いことも増えるのです。

この世界の最大のセキュリティ・ホールは、「人」です。これだけ注意喚起しているのに、「特殊サギ」(旧称・おれおれサギ)はなくならない。

どれだけ技術的なセキュリティを高めても、マイナンバーや、マイナンバー・カードをずさんに扱う人は、絶対に出てくるわけです。そしてそれを狙う悪知恵のまわる人も必ず現れるわけです。そういう人たちを無くすことは無理です。だったら、制度的・技術的に「使えない部分」を確保するしかないと私は思うのです。

今後の焦点は、その「使えない・使わせない制度的技術的な部分」を広げていくことと思います。