日比嘉高研究室

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ある地方国立大の理事クラスの方からのメール(教員養成・人文社会系廃止削減問題)

先日、ある地方国立大の理事クラスの方からメールをいただきました。人文社会系の改組に関わるお仕事にもたずさわっていらっしゃるとのことでしたが、たいへん危機感をお持ちでした。その内容をご紹介します。
なお、数字などは変えていませんが、大学の特定を避けられるような処理をしてあります。文体も変えてあります。
公開については、もちろん許可をいただいています。シェアも歓迎します。

国立大の人文社会学系学部は、経済基盤の弱いところから順次、縮小廃止に向かうと思います。


たとえばうちの大学ですと、人件費は来年から1億3000万円の赤字が発生、それが今後毎年5000万円ずつ膨らんでいきます。単純に教員1名を1000万円とすると、第3期の6年間で、43名の教員を減らさないといけません。また内閣府が決めた国家公務員削減率は今年から年間2パーセントになってます。あわせると、人文社会科学系1学部分の教員削減になります。


赤字を少しでも少なくするために、大学執行部は文科省から予算をとってこようとします。文科省は自分たちに都合のよい改革案を示す大学には、「機能強化」といって巨額の予算を重点配分します。文科省にとって都合のよい改革案とは、つまり産業界の要請にもとづく理工系人材育成で、教員養成・人文社会科学系学部の縮小・廃止です。


ということは、いずれにしても、教員養成系と人文社会系は、出口なしです。


地方の「駅弁」系大学は、地(知)の拠点事業(COC+)の予算を獲得して生き残りをかけていますが、数値目標として、今年度申請分から、地元企業への就職率を確約しなければならなくなりました。うちの大学は卒業生の33パーセントが地元県に就職していますが、それを5年間で43パーセントに引き上げなければなりません。実際に、それは無理ですし、学生には、世界を舞台に、全国を舞台に活躍してほしいと思って教育をしますので、自家撞着をおこしてしまいます。


四国の国立大学法人の人文社会科学系学部では、県議会に働きかけて、学部存続の請願をおこなって採択されています。うちの大学もそのようにすることが必要になるかもしれません。


以上です。