日比嘉高研究室

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例の教員養成系・人文社会学系の廃止・転換の指示がいよいよ来るようです

国立大学法人の第2期中期目標期間終了時における組織及び業務全般の見直しについて(案)」が文科省から出ている。5月27日付。国立大が文科省と交わすお約束を中期目標というが、その第3期をこれからまとめる際の基本指針となるものだ。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2015/05/27/1358297_15_1.pdf

例の、教員養成系・人文社会学系学部・大学院の廃止・転換の指示が、いよいよ(まあ「既定路線」なわけだが)出てきている。該当箇所は「第3 国立大学法人の組織及び業務全般の見直し」の「1 組織の見直し」のところのトップバッターとして登場する。

「(1)「ミッションの再定義」を踏まえた組織の見直し
「ミッションの再定義」で明らかにされた各大学の強み・特色・社会的役割を踏まえた速やかな組織改革に努めることとする。
特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、18歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする。」

ニュースのかたちではこういうのになっている
「国立大学に文部科学省が要請…文系学部の廃止や統合進むか」
http://news.livedoor.com/article/detail/10163518/


国立大の多くの教員たちにとっては、もう目新しくもない指示である。というのも、すでにやらなければならない部局においては、改組のワーキングがスタートしていたり、はやいところではもう改組後の新組織で学生募集が始まったりしているからである。

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改組=組織改革と聞いて、なんだか旧態依然とした組織が新しく生まれ変わるかのような漠然とした期待のイメージをもつ人は、組織と組織を合併したり、組織の構成を削ったりする作業で、「中の人」がどれだけ疲弊し、人間関係にヒビを入れるのかを知らない。

組織が生まれ変わって、新しい何かに変わるのなら大手術もいい。だが、ここで要求されているのは削減のための削減である。先行きに何の明るいビジョンもない。文科省が「教員養成系・人文社会学系はいらない」といっているのだから。改組作業に元気が出るはずもない。それはある意味「終活」だ。

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すでに環境の厳しいところから、そして脱出できる能力を持っている人から、国立大から私大等へと移っていく教員の例をいくつも聞く。そういう選択をした教員を責める気はない。ある意味当然だから。だが、あたかも自分たちの所属先が沈み行く船であるかのように感じながら働くのは、苦しいことだ。

教員養成系・人文社会学系が「イノベーション」や経済振興と縁が薄いことなどあまりにも自明だ。金にはならないが、社会のために、未来のために必要なことを行うのが、「公」の役割ではないのか? それを切り捨てて金儲けに走るのが国の役割か? 金儲けは放っておいても誰かがやる。


とにかく、私は白旗は揚げない。