日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

先日いただいた本

出口さんより下記のご高著をいただいた。

幸田露伴の文学空間――近代小説を超えて』
出口智之 著
青簡舎(「簡」は「日」でなく「月」)
http://www.seikansha.co.jp/
2012年9月
3800円

東京大学に提出された博士論文をもとにしている。幸田露伴の研究者は多くない(とくに若手で)が、そのなかの代表格の一人が出口さんである。露伴はとにかく著作が多く、かつ知識が幅広すぎ、しかも「坪内逍遙小説神髄」や東海散士「佳人乃奇遇」を同時代的に受容し、その影響下に出発した文学青年が、太宰治「斜陽」や中村真一郎「死の影の下に」とおなじ年まで活動を続けた」(同書p.3)――すごい!――、りしているから、手に負えない。ちょっと専門家でないと尻込みする作家である。出口さんの著作は歴史叙述の問題や、本文の改稿、作家同士の交友関係、知的ネットワークなど幅広く丁寧に追求していて、非常に勉強になる。露伴だけでなく、根岸党(饗庭篁村や宮崎三昧ら根岸近辺に集まった文士たち)に関心がある人も読むべき一冊。