日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

フライブルグに来ており


 例年、この時期には名古屋大学大学院文学研究科附属の近現代日本文化研究センターがシンポジウムを行っているのだが、今回はそれがフライブルグ(ドイツ)で開催されることになり、参加するために当地に来ている。今回は「文化の越境と翻訳」と題するワークショップで、名古屋大学の日本文化学講座の数人とベルリン自由大学のイルメラ・日地谷=キルシュネライトさんら、それからパリ第7大学のセシル坂井さんらが参加している。
 詳細なプログラムは以下。
http://www.lit.nagoya-u.ac.jp/research/mcjc/mcjc03/

 今回は、日本から同行するメンバーが多く、私は「連れて行ってもらう人」状態なうえに(お金は自分の研究費なんだけどね)、ワークショップも基本的に日本語進行なので、非常に楽ちんである。が、それでも違う文化的背景のメンバーと議論を交わすのは、色々発見もあり振り返ることもある。私の出番は明日だが、どんな話が交わされることになるのか、楽しみである。

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 フライブルグは、フランスにもスイスにも近いドイツ南部の小都市である。小さな市街だが、市中はかなり人が多く賑わっている。フッサールハイデガーのいたフライブルグ大があり、学生の町である。かつ、環境が良いため年配の人にも人気があるのだとか。間近には黒い森がせまり、町中には小さな水路が走る。旧市街からは基本的に車は閉め出され、市電が走り、石畳の道の両脇に小さな商店が軒を連ねる。中心部には300年かけて作ったという大聖堂がそびえ、鐘が鳴り響く。数日しかいないが、いい町だなぁと直感的に思う。

 しかしこの落ち着いた佇まいも、戦争による破壊から再建されたものらしい。戦前の姿に戻るよう、厳しい制限をかけたのだという。町並みというものに対する感性が、日本とは根柢から違うなぁとため息が出る。ただし、その再建もお金があってのこと。西独の町はそれができたが、東独の町はそれができなかった、と聞いた。古いものを守るためには、決意と時間とお金が必要なようだ。