日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

望郷のハワイ――二世作家中島直人の文学――

『文学研究論集』第27号,2009年2月,pp.219-238


[要旨]
本論文は、ハワイ生まれの二世作家中島直人を再評価しようと試みたものである。中島は、ハワイの日本人学校と公立学校で教育を受け、その途中で日本へ渡日している。その後早稲田大を中退し、小説を発表し始めた。彼の文学は「追懐」「郷愁」の文学としてとらえられてきたが、その背後には「人の移動、文学の越境」「同時代文学の知的枠組みの流用」「二重意識」があった。前半では彼の軌跡と文業について概観し、帰米の問題として、そして昭和戦前期の日本文学・文壇の問題として捉えなおした。後半では『ハワイ物語』から「ワイアワ駅」を取り上げ、望郷の文学と言われる彼のテキストを、「落書き」「記念碑」「記憶」「小説」などをキーワードに、より精緻に掘り下げて分析した。