日比嘉高研究室

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谷崎潤一郎の新刊研究書 紹介


 大学院時代に一緒に勉強した張栄順(チャン・ヨンスン)さんが谷崎の研究書を出されました。『谷崎潤一郎と大正期の大衆文化表象──女性・浅草・異国──』と題したもので、彼女の博士論文を公刊した本です。内容については下の目次を参照していただきたいと思いますが、大正期の大衆文化との関係から谷崎の文学を捉え直した論の数々は、それぞれなかなか読みごたえがあります。
 この本は韓国の出版社から出ていますので(言葉は日本語です)、一般の書店では手に入らないそうです。こういう形態の、日本では手に入りにくい日本研究の本は、他にもたくさんあるのでしょうね。この本については、

で注文できるそうです。ご関心のある方はぜひ。


張栄順
谷崎潤一郎と大正期の大衆文化表象──女性·浅草·異国』

어문학사 2008年6月
ISBN 9788961840484 93830

序章

第1部 女性表象
 第1章 〈新しい女〉像と谷崎潤一郎「秘密」──「秘密」論
 第2章 1910年代の毒婦の芝居と谷崎の描く女性──「饒太郎」論
 第3章 「痴人の愛」の転換と女性読者──「痴人の愛」論

第2部 浅草表象
 第4章 「堕落」を夢見る小僧──「小僧の夢」論
 第5章 祝祭空間としての浅草──「魔術師」論
 第6章 「鮫人」における浅草表象と脚色される支那趣味──「鮫人」論

第3部 異国表象
 第7章 戯曲「象」における「南洋」表象──「象」論
 第8章 大衆文化としての「映画劇」成立と谷崎潤一郎──「人面疽」論
 第9章 文化の翻訳としての映画物語──「肉塊」論

結章
参考文献