日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

「満洲」における書物流通――満洲書籍配給株式会社以前、以後

第6回 東アジアと同時代日本語文学フォーラム 上海大会、2018年10月20日復旦大学

[概要]

この報告では、「満洲」における日本語書籍の小売・流通史を追跡した。対象としたのは日本語の書物を扱った日本人経営の書籍店と、それら書店へ内地からの書籍を運んだ取次業者である。なお本発表でいう「満洲」とは、日本の傀儡国家であり統治的・文化的実験場でもあった「満洲国」および関東州を主に指すが、「満洲国」成立以前の同地域の状況も考察の対象とした 。
 今回は細かな事実よりも大きな骨組みを示すことを目指し、時代順に論述した。具体的には、日清戦争以後、満洲書籍商組合成立以後の書籍小売・流通史、一九三〇年代における各書籍店のプロフィールと活動、満洲の読書人たちの残した記事の検討、満洲書籍配給株式会社の成立と満洲国の廃滅までである。