日比嘉高研究室

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文学の歴史をどう書き直すのか──二〇世紀日本の小説・空間・メディア

笠間書院、2016年11月15日、全252頁

(英題:Rewriting Literary History: Fiction, Space, and Media in Twentieth-Century Japan

新著、刊行されました!

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今回の本は3つの焦点を持っています。空間、文学史、メディア。全体として“文学の歴史をどう書き直すか”というコンセプトでまとめました。
個人的に、メジャー作家やメジャー作品を扱うのを忌避するような傾向があるのですが(なぜ…)、この本には梶井基次郎の「檸檬」や二葉亭四迷の「浮雲」論をはじめ、漱石菊池寛横光利一など、入っております。

目次は以下のとおりです。ぜひご高覧を。

目次

空間・文学史・メディア―何に出会い、どう書いていくのか


第I部 言葉と空間から考える


第一章●身体と空間と
心と言葉の連関をたどる―梶井基次郎檸檬」―

1 〝上ル下ル〟から京都と「檸檬」を読む
2 身体と空間と心を言葉はどう語っているか
3 「街の上で」という表現が示す身体と空間
4 身体を読む―潜在と顕在の劇のなかで
5 身体の模倣と抵抗―想像の「大爆発」とは
6 読者の身体、読者の街


第二章●文学から土地を読む、土地から文学を読む
菊池寛「身投げ救助業」と琵琶湖疏水

1 土地の歴史、文学の記憶
2 京都、岡崎の近代と物語の時間
3 菊池寛は岡崎・疏水に何を見たか
4 物語のもう一つの伏流―金銭をめぐって
5 京都近代の傍流の風景


第三章●鉄道と近代小説
近松秋江舞鶴心中」と京都・舞鶴

1 道行はどこへ―近代テクノロジーと心中
2 「舞鶴心中」の踏まえるもの―実話・世話浄瑠璃
3 描かれる鉄道の利便と愉楽
4 鉄路の道行―心中と軍港
5 距離と時間、そして今生の名残の抹殺


第Ⅱ部 文学作品と同時代言説を編み変える


第四章●笑いの文脈を掘り起こす
二葉亭四迷浮雲」―

1 笑いから見る「浮雲
2 「浮雲」の笑い―類型的性癖描写、言葉遊び、列挙
3 列挙と百癖、あるいは〈当世官員気質〉―発想の型に注目する
4 何が「浮雲」の笑いを消したのか


第五章●作品の死後の文学史
夏目漱石吾輩は猫である」とその続編、パロディ―

1 「吾輩の死んだあと」の文学史
2 吾輩の死後の生活圏―〈アーカイブ〉の生成
3 二次的創作の中の「猫」たち―その四類型
4 〈アーカイブ〉から考える〈文学史


第六章●人格論の地平を探る
夏目漱石「野分」―

1 明治末、人格論の時代
2 白井道也の『人格論』と同時代の人格論パラダイム
3 「感化」と小説―人格論のキーワード


第七章●文学と美術の交渉
―文芸用語「モデル」の誕生と新声社、无声会―

1 文芸用語「モデル」の来歴を探る
2 田口掬汀「もでる養成論」の新奇さ
3 「モデル」という用語の流通経路―平福百穂・新声社・无声会
4 「モデル」をめぐる理論的文脈―大村西崖と田口掬汀
5 文芸用語「モデル」、その後の展開


第八章●表象の横断を読み解く
―機械主義と横光利一「機械」―

1 時代が機械美を発見する
2 機械をめぐる想像力1―機械・人間・ロボット
3 機械をめぐる想像力2―機械の運命論
4 機械の運命論と横光利一「機械」
5 「科学」としての「文学」が測り始めるもの


第Ⅲ部 メディアが呼ぶ、イメージが呼ぶ


第九章●声の複製技術時代
―複合メディアは〈スポーツ空間〉をいかに構成するか―

1 複製された声とスポーツの空間
2 声の争奪戦―スポーツ・アナウンサーと活字メディア
3 スポーツ・ジャーナリズムの拡大と〈スポーツ空間〉
4 ファンの姿が描かれることの意味
5 呼びかける声の向こうに


第一〇章●風景写真とまなざしの政治学
―創刊期『太陽』挿画写真論―

1 雑誌に写真が入った時代
2 写真版印刷の登場と『太陽』
3 創刊期『太陽』の挿画写真概観
4 外国風景の挿画写真―机上旅行と人類学のまなざし
5 日本風景の挿画写真
6 創刊期『太陽』挿画写真の機能と効果


第一一章●誰が展覧会を見たのか
―文学関連資料から読む文展開設期の観衆たち―

1 「観衆」とは誰か
2 美術展覧会と近代観衆
3 複層化する観衆
4 展覧会システムと観衆化
5 文展観衆のなお「外」に