読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

(予告)日本近代文学会 特集 〈流通する書物〉の近代―変動期に於けるネットワーク形成と文化

かなり近付いてしまってからの宣伝(もう来週末ですね・・・)になりますが、以下のシンポジウムに登壇します。

日本近代文学会 2016年度 秋季大会 特集
 日時: 2016年10月15日(土)14:00より  
 場所: 福岡大学 会場:A201教室

《特集》〈流通する書物〉の近代 ―変動期に於けるネットワーク形成と文化
 磯部 敦   異本流通の地場―『徳川十五代記』『明治太平記』を例に―
 日比 嘉高   ネットワーク・空間・ヘゲモニー―内地/外地を結ぶ書物流通
 坂口 博   戦後の地方出版社の問題
 柴野 京子   近現代に於ける読書空間の意味と変容
 (ディスカッサント)石川 巧

http://amjls.web.fc2.com/gakkai.html#2015-06

全員の要旨も、上のリンク先からたどれます(わたしのは下に貼っておきます)。
近代文学会というより出版学会かよというラインナップですが、石川巧さん交えての討議も含め、面白いものになりそうです。いま、届きつつある他の方のレジュメを見ていますが、わたし自身が他の人の発表を聞くのがとても楽しみ。

会場が九州で、遠距離移動になる方も多いかもしれませんが、どうぞお運びを。学会は二日目もあり、多彩な個人発表・パネル発表が並びます。やはりリンク先から見られます。

発表要旨(日比分)

ネットワーク・空間・ヘゲモニー――内地/外地を結ぶ書物流通
日比 嘉高

 現在、内地と外地を結んだ書物の流通網の調査研究を進めているが、悩むのは書物流通という社会的装置についての分析を、文学研究など文化コンテンツについての論とどうつなぐか、ということである。書物流通の社会的な仕組みがあり、その「上」に文化が乗っているというイメージは、漠然と共有されているように思う。だが、ではその「上に乗っている」という状態は、どのように――この比喩が適切であるかどうかも含めて――研究の言葉で説明できるのだろうか。
 まずは内地/外地を結ぶ書物流通のネットワークを、できるだけ実証的に捉える必要がある。取次、書店、同業者組合などの歴史を追いかける。さらに、これらの書物を直接的に担った諸要素の背後に、交通網があり、教育制度があり、図書館があり、国家ならびに植民地機関の統制がある。
 こうした社会的装置と連関しあって文化的な活動が営まれる。文学はその一部であるが、考えたいのは文学の問題だけではない。内地/外地を結んだ書物の流通ネットワークは、いかにして文化を生み出し、形作ったのかを考えたい。課題の一つは、書物流通が植民地支配下において「空間の(再)生産」(アンリ・ルフェーブル)を行い、その空間およびネットワークの配置が帝国のヘゲモニーの維持・行使に関わったことの考察である。この問題は、支配的ネットワークの形成・運用と抵抗のネットワークとの関係を考えるという課題にもつながる。また流通する商品である「書物」というものの考察も必須であろう。書物はモノであり、同時に知であるのだから。そしてネットワークに関わる主体(間)の行動も考えねばならない。帝国の書店網は多民族の接触空間を創り出す。
 最後に、余裕があれば書物の流通網と文学空間の関係を考えよう。インフラとしての機能はもちろんだが、外地書店は、場合によってはサロンとして、出版元・販売元として、またアジールとしても機能していた。