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日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

最近いただいた本

西田谷洋、五嶋千夏、野牧優里、大橋奈依 著
メタフィクションの圏域』
花書院、2012年12月

西田谷洋さんとその教え子たちの共著。論文集。序章では西田谷さんが認知物語の観点から、メタフィクションの構造を捉え直している。作品内作品Eと語り手のそれに対する言及Pを、「言及フレームS」という装置を媒介して考えようとしている。言及という行為はそれが行われる文脈によって動機づけられている。メタフィクションとは、認知物語論的に言えば、語り手がEに対してPを操作しながら再解釈を行う行為ということになる。その行為を抽出して構造化して捉えるとSというフレームが導ける。
 論集には4本の論文が収められている。(これらは別に認知物語論のフレームを使っているわけではない。)順に、五嶋千夏「岩手県を「翻訳」する〈イーハトーヴ〉――ベンヤミンにおける「言語」と「翻訳」とを手がかりに――」、野牧優里「太宰治人間失格』論――言葉を統御する者――」、大橋奈依「自己パロディ・境界・オープンエンド――よしもとばなな『N・P』論――」、西田谷洋「村上春樹アフターダーク』の方法」。

西田谷洋編
室生犀星王朝小説の世界』
一粒書房、2012年12月

こちらも西田谷洋編。愛知教育大学室生犀星研究会の成果を集めたものという。序章には西田谷さんによる、王朝小説の機能、役割についての分析があり、近代社会への対抗性、理性への否定、経験性への志向、現実主義、ステレオタイプ的な女性観の反復・強化などといった特徴が指摘されている。本編には8本の短い論考が収められている。順に、西田谷洋「はじめに」、畑中聡「否定されるステレオタイプとしての女 ―「荻吹く風」」、来川知裕「恋愛の神話化と地域統合 ―「姫たちばな」」、鈴木綾夏「眼差されることと手紙の戦略 ―「玉章」」、舟橋恵美・姜京愛「照応・対応の現在性 ―「津の国人」」、大橋奈依「創発される愛・生・死 ―「玉桐」、中野愛「勝者のいない争い ―「野に臥す者」」、保田大輔「一つではない女の領域 ―「舌を噛み切った女またはすて姫」」、西田谷洋「生の修辞学―『かげろふの日記遺文』」。

芥川龍之介―生誕120年

芥川龍之介―生誕120年

生誕120年、没後85年を記念した芥川龍之介の論集。1「わたしと芥川龍之介」には遺族や作家などのエッセイが収められる。2「芥川龍之介の諸相」ではリッケルト、戦争、関東大震災、国語教科書、肖像写真などが論じられる。3「芥川テクスト」を読むは作品論10編を収録している。4「5つのテーマから芥川に迫る」は、村上春樹/浮世絵/一高時代/翻訳/手紙によるアプローチ。5「芥川研究ガイド」には研究史、研究文献目録、年譜が収められている。320ページの充実したボリュームで、芥川研究の前線を見渡すには格好と思われる。謹呈下さった執筆者の皆様に感謝いたします。