日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

最近いただいた本 その3

第一次大戦の“影

第一次大戦の“影"―世界戦争と日本文学

そうこうするうちに、中山弘明さんから二冊目の御本がとどいた。前回紹介したものと、対になるご著書だという。序章で入念に論じられているが、第一次世界大戦およびその後に続く戦間期を、昭和史などからの遡及的な視線によるものではなく、当時の言説の配置を丁寧にたどって論じようとするものである。目次を見るとわかるが、いわゆる大正文学史の花形作家は前面には出てこない(考察のなかにはむろん登場する)。そうした規制の立脚点よりもむしろ、新聞記者、社会講談やページェントなどといった興味深い切り口から、第一次大戦という海の向こうの戦争と、日本の言論空間との距離が測られていく。そしてその構成の中に、いかに文学の表現と想像力が関わったか。綿密な検討が重ねられ、簡単には読み進められないが、問題設定も面白く、論述も端正。しっかり勉強させていただきます。