日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

最近いただいた本

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副題は「中国からみる私小説」とされています。第一章では明治期の文学史を概説、第二章で「自然主義文学と「私小説」の成立」を論じます。このあと各論に入り、第三章で初期の様々な私小説として主に大正期の諸作家を、第四章で代表的な私小説作家として対象から戦後までの作家を取り上げています。第五章では「多面的見解および定義づけの試み」として、諸家の私小説論を整理し、「私」概念を日中で比較しています。

近代旅行記の中のイタリア―西洋文化移入のもう一つのかたち (学術叢書)

近代旅行記の中のイタリア―西洋文化移入のもう一つのかたち (学術叢書)

真銅さんにお恵みいただきました。第一部は「イタリア諸都市を歴訪する日本人たちの足跡」として漱石など文学者の他、実業家、官僚、政治家、女性、画家、学舎などの訪問の跡がたどられています。当時の観光案内の記述も紹介されます。第二部は「イタリア諸都市の観光スポット今昔」として、観光スポット、ホテル、飲食、旅行社・旅行ガイドなどが記述されています。図版も多く、日本人たちがかつてどのように/どのようなイタリアを経験したのかを探るためには、格好の手引きになりそうです。

剽窃の文学史―オリジナリティの近代

剽窃の文学史―オリジナリティの近代

甘露さんにいただきました。400ページを超える大部の成果。明治期の著作権思想などの展開を、剽窃、無断転載、偽版などをめぐる訴訟・トラブルの精緻な検討から考察します。資料の博索、論述の粘り強さ、いずれも読み応え抜群と思います。明治前半の文学史・出版史に関心をお持ちの方は、必読の一冊でしょう。のみならず、「剽窃」とは何か、というテクストへのオリジナリティや帰属性への問いをかかえた本書の構えは、広く近現代の著作権や〈作家〉性、パロディの問題を考えなおす作業につながっていくと思われます。補論として「『チーズはどこへ消えた?』盗作訴訟事件」も論じられています。