日比嘉高研究室

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文学で考える 〈仕事〉の百年

飯田祐子、日高佳紀、日比嘉高編、双文社出版、2010年3月31日、全202頁

文学で考える“仕事”の百年

文学で考える“仕事”の百年

以前にやはり同じ編者で出した『文学で考える〈日本〉とは何か』の姉妹編。大学・短大向けに編んだ短編小説のアンソロジーである。今回のテーマはお仕事。人は悲しくもうれしくも、仕事とともにでないと生きられず、自然、仕事は時代と社会と人を写すのである。そして文学は、そうした仕事のこの百年の近代を描いてきた。ラインナップは以下の通り。教科書として大学短大で使っても面白いこと請け合いですが(宣伝)、目次を御覧になればおわかりの通り、これだけ入って2000円はお値打ちである。昨今、文庫も高いからね。解説・参考文献付き、一部作品には語注も付けました。

I <仕事>の近代
  泉鏡花「海城発電」(解説・西川貴子)
  樋口一葉にごりえ」(笹尾佳代)
  正宗白鳥「塵埃」(永井聖剛)
  谷崎潤一郎小さな王国」(五味渕典嗣)

●コラム●農という業〔なりわい〕飯田祐子


II 広がりと変容
  吉屋信子「ヒヤシンス」(光石亜由美)
  葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」(副田賢二)
  玉昶雄「奔流」(大東和重)
  井伏鱒二「遥拝隊長」(大原祐治)

●コラム●都市を生きはじめた者たち(日高佳紀)


III 〈仕事〉とは何か
  坂口安吾「続戦争と一人の女」(天野知幸)
  庄野潤三「プールサイド小景」(飯田祐子
  村上春樹「午後の最後の芝生」(日高佳紀)
  角田光代「橋の向こうの墓地」(日比嘉高)

●コラム●仕事の越境、文学の越境(日比嘉高)