日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

プライヴァシーの誕生――三島由紀夫「宴のあと」と文学、法、ゴシップ週刊誌――

『思想』No.1030、2010年2月5日、pp.51-66

[要旨] 一九六〇年前後の日本社会において、文学、法、人々の〈私的な領域〉の三者がどのようなかたちで接しあっており、そこに「プライヴァシー」なるアメリカ法に起源をもつ新たな概念が導入されることによって、いかなる変動が引き起こされたか、という問題を追求した。プライヴァシーという概念が一九六〇年前後の日本社会の文脈の中で「誕生」するようす、プライヴァシー侵害と芸術の自律性との衝突の論じられ方、「宴のあと」という小説作品の表現との交差、などを論じた。