日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

身体・空間・心・言葉──梶井基次郎「檸檬」をめぐる──

『佛教大学総合研究所紀要別冊 京都における日本近代文学の生成と展開』2008年12月、105-122

[要旨]
梶井基次郎の「檸檬」を題材とし、身体と空間と心との取り結ぶ関係を、小説の言葉がどのように捉えたのかを考察した。街の上をさまよう青年を描く小説には、彼の身体と空間が生きた京都の街が織り込まれている。「あがる/さがる」や通り名のような京都固有の空間の表現、身体と空間と心の連関性、その変動のようす、複数の潜在する身体の交代、またそれを切り替えようとする主体の能動性、読者の読書行為と空間表現の結びつきなどに着目しながら小説の言葉を読み解いた。

なお、文中に健在と書いた八百卯は2009年1月25日に閉店した。