日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

鉄路の道行――近江秋江「舞鶴心中」


國文學』第53巻6号、2008年4月号、臨時増刊号「旅、鉄道、そしてエッセイ」
2008年4月20日
pp.51-58
http://www.gakutousya.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=0172

[要旨]

心中の道行は、近代に入りどのような展開を迎えたのか。近松秋江の「舞鶴心中」(1915)を材料としつつ、鉄道というテクノロジーが、世話浄瑠璃の道行シーンをどのように変えたのか、舞台となった軍港・舞鶴、および舞鶴線の歴史を背景におきつつ考察した。浄瑠璃の道行は〈歩行のリズム〉で描かれていた。鉄道は距離と時間だけでなく、そこにあった今生の名残をも抹殺して走り抜けた。