日比嘉高研究室

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傍流に生きる──菊池寛「身投げ救助業」と琵琶湖疏水





『佛教大学総合研究所紀要』第14号,2007年3月,pp.21-33

 文学テクストの分析によってしかわからない土地の風景を、また逆に、土地を読むことによって新たに浮かび上がる文学テクストの姿を、追求してみようとした試みの一つである。具体的には、菊池寛「身投げ救助業」と京都の岡崎を分析する。疏水工事、第四回内国博覧会など、岡崎の地に近代京都の象徴的な景観が創りあげられていく過程を一方におきながら、テクストは「身投げ救助業」という奇妙な生業と、それにささやかな望みをかける老婆の生活を、冷徹に描いていく。その二つの対比構造を、「貯金」という近代の新しい〈装置〉の分析を補助線としながら考察した。そこに浮かび上がるのは、菊池のテクストが照射した、京都近代の傍流の風景である。


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