日比嘉高研究室

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大衆の意地悪なのぞき見──『講談倶楽部』のスポーツ選手モデル小説──  



『大衆文学の領域』大衆文化研究会編集・発行、2005年6月,pp.197-213

[紹介]

1930年前後に大衆誌『講談倶楽部』を舞台に展開した、スポーツ選手モデル小説を分析する。近代文学の歴史上、モデル問題は数多く生起しているが、本論の対象とするモデル小説は、スポーツ選手を題材としている点において特異である。〈純文学〉の領域においてそれまでに形成された枠組みが、大衆文化の領域に奪用されていることは確かだが、それだけではない。〈スター〉という祭り上げられた偶像に対する、大衆の屈折した欲望が、その表象の中に織り込まれていると考えるのが適当だろう。