日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

(論文)亡霊と生きよ――戦時・戦後の米国日系移民日本語文学

木越治・勝又基編『怪異を読む・書く』国書刊行会、2018年11月所収、pp.443-461 (要旨)この論考は、米国日系移民の日本語文学を主な検討の対象としながら、亡霊と記憶と文学をめぐって考えたものである。分析の対象とする作品は、戦後の米国日系人が刊行し…

紹介『怪異を読む・書く』、あるいは木越治先生の追想

最近共著として国書刊行会から出版した『怪異を読む・書く』について紹介をしたいのだが、順を追って木越治先生との思い出から書く。本書は、木越先生の古稀記念出版として企画され、そして予想もしなかったご逝去を受けて、御霊前に捧げる追悼論文集となっ…

講演「真山青果と徳田秋聲 明治大正文壇交遊録」

以下の講演をします。秋の金沢へ、ぜひ。 「真山青果と徳田秋聲 明治大正文壇交遊録」 日比嘉高 徳田秋聲記念館(金沢市) 11月18日(日) 14時から ※ 同日13時から秋聲忌の墓前祭です。

「満洲」における書物流通――満洲書籍配給株式会社以前、以後

第6回 東アジアと同時代日本語文学フォーラム 上海大会、2018年10月20日、復旦大学 [概要]この報告では、「満洲」における日本語書籍の小売・流通史を追跡した。対象としたのは日本語の書物を扱った日本人経営の書籍店と、それら書店へ内地からの書籍を運…

小説は東日本大震災を描けるのか?~「美しい顔」騒動から見えるもの(毎日メディアカフェ)

震災の表現と「剽窃」問題で議論になった「美しい顔」を起点に、ジャーナリストの石戸諭さん@satoruishido とトークイベントを行います。「小説は東日本大震災を描けるのか?~「美しい顔」騒動から見えるもの」 石戸諭×日比嘉高 10月11日18:30~ 毎日メディ…

Inheriting Books: Overseas Bookstores, Distributors, and Their Networks

Keynote Panel "Evidence and the Challenges of the Humanities," Yoshitaka Hibi, Etsuko Taketani, Indra Levy, Christina Laffin, and Anne McKnight (moderator) , Sep. 7th, in 27th Annual Meeting of the Association of Japanese Literary Studies …

勉誠出版がネトウヨ化しているという悲報に接したあと自省した夜

(2018.08.12追記)この問題のあと、Twitterで以下のタグが出現して、盛り上がっています。Twitterらしいスマートな応援の仕方で、いいですね。私もちょっとだけ推挙しておきました。 twitter.com以下オリジナル本文です。 ■勉誠出版がネトウヨ化していると…

「美しい顔」とそれが提起した問題についての補遺

1. 「美しい顔」は、つくづくかわいそうな作品になったと思う。私は、この作品が世に出てきた時とても褒めたし、今でもよい作品で「ありえた」小説だと思っている。作者もポテンシャルの高い人なんだろう推定している。 2. この問題に首を突っ込んで以来…

「美しい顔」の「剽窃」問題から私たちが考えてみるべきこと

1.剽窃がアウトなのは当然だが、問題の核心はそこにない 第159回芥川賞の候補作となった北条裕子「美しい顔」が、他人の作品から表現の「盗用」を行っているのではないかと指摘を受け、議論になっている。「美しい顔」は六月号で発表された群像新人文学賞…

「大学ランキング。悔しかったら上げてみろ」

言いたい放題に言ってくれている記事について、一言だけ反論しておく。 kyoiku.yomiuri.co.jp 「(国立大は)運営費交付金の減額に逃げ込み、それを口実にやるべきことをやっていないのだ」 「大学ランキング。悔しかったら上げてみろ」 http://kyoiku.yomiu…

(取材協力)『AERA』の特集「ウソつきとは戦え」

最新号『アエラ』の特集「ウソつきとは戦え」(2018年6月11日)において、コメントしております。手にとっていただければ幸いです。聞いていた特集タイトルと変わっている気がしますが、悪くないですね。賛成なり。ウソつきとは戦え。publications.asahi.com

講演「図書館を文学から覗いてみれば」

明日は、以下の講演をします。 場所:安城市図書情報館多目的室 日時:2018年5月26日(土)13:00 講演会 14時より 演題「図書館を文学から覗いてみれば」 日比嘉高氏(名古屋大学大学院人文学研究科准教授) https://sites.google.com/…/chuubutoshoka…/gyou…

名古屋市教育委員会の「親学」について調べてみたらわかったこと

Ⅰ 小学校から「親学」のパンフレットが来た 先月(2018年4月)、子どもが小学校から「親学」と大々的に書かれたパンフレットをもらってきた。そこには、 名古屋市教育委員会では、子どもにとって親はどうあるべきかを考え、子どもとともに親として成長する楽…

「ポスト真実」の世界をどう生きるか ウソが罷り通る時代に

小森陽一編著、香山リカ・浜矩子・日比嘉高・西谷修著、新日本出版社、2018年4月20日、221頁。 2017年9月に新宿の朝日カルチャーで行った、小森陽一さんとの対談が書籍化されました。この講座は「ポスト真実」をめぐる連続講座で、コーディネータの小森陽一…

外地書店を追いかける(10)戦時下の台湾書籍界

『文献継承』金沢文圃閣、第32GO、2018年3月、pp.12-15 新高堂、戦時下の台湾小売業界、日配台湾支店の誕生、買い手から見た戦時下台北の本屋事情などを話題にしています。

新人小説月評(文學界)3月、4月分

書いております。ご関心のある方、ぜひ。 以下の連続ツイートで内容について少し紹介しています。スレッドになっているので、クリックすると連投が読めます。『文學界』の新人小説月評は、「見えることの齟齬、見えてしまうことの救済」と題して、3作を取り…

ダメ作家の作品は擁護されるべきか

KaoRiさんの告白、告発の文章を読んだ。つらかっただろうと思う。note.muこれを読んだあと、アラーキーの写真をこれまでと同じように見ることはできない。アラーキーの写真は好きだった。 文学研究をしている人間として、私は作品の創作過程がはらんでいた倫…

卒園式の謝辞

T組のみんなにも聞いてもらいたいので、できるだけわかりやすくお話しします。今日は雨が降ってしまってちょっと残念ですが、だんだんと暖かくなって春が近づいてくるなかで、こうして卒園式をみんなですることができるのは、とってもうれしいことです。す…

『〈自己表象〉の文学史』第三版、刊行されました

2002年の刊行以来ご好評をいただいている(自分で言うな)『〈自己表象〉の文学史――自分を書く小説の登場』の第三版が刊行されます。 第三版のポイントは、 私小説研究文献目録が最新の状況にアップデートされた ソフトカバーになった 定価が 2900円+税 に…

文化資源となる文学、ならない文学――〝過疎の村〟で何ができるか(研究報告)

横光利一文学会第17回大会、日本近代文学館、2018年3月17日

「文化資源(コンテンツ)としての文学」横光利一文学会 第17回大会特集

17日(土)に以下の研究集会があります。私も登壇します。ご関心のある方は、ぜひ。【告知】横光利一文学会 第17回大会 特集:文化資源(コンテンツ)としての文学2018年 3月 17日(土) 12:30 日本近代文学館ホール日比嘉高「文化資源となる文学、ならない文…

(取材協力)事実に基づかない政治という病:東京新聞

2018年3月2日の東京新聞 特報欄でコメントしています。ポスト真実的状況について。 下記の共著『「ポスト真実」の時代 「信じたいウソ」が「事実」に勝る世界をどう生き抜くか』に基づいた内容になっていますので、ご関心を持たれた方は、ぜひ。東京新聞:事…

東アジアと同時代日本語文学フォーラムの告知サイトを公開

東アジアと同時代日本語文学フォーラムの告知サイトを公開しています。https://eacjlforumweb.wixsite.com/eastasiaforum 今後、同フォーラムについてのさまざまな告知はこちらを中心に行います。

ポスト真実時代と市民社会(インタビュー)

以下の記事に協力しました。 ボランティア・市民活動情報誌『ネットワーク』352号,、2018年2月 <特集> 「情報」と「真実」の市民活動 ◎巻頭インタビュー ポスト真実時代と市民社会 日比嘉高(名古屋大学大学院 文学研究科 准教授) https://www.tvac.or…

受付中★論文投稿者と学会発表者 東アジアと同時代日本語文学フォーラム

現在、東アジアと同時代日本語文学フォーラムでは、論文投稿者と学会発表者の募集をしています。 論文は2月17日が〆切。 発表者は、3月30日が〆切です。 詳しい要領は下記をご参照下さい。 https://eacjlforumweb.wixsite.com/eastasiaforum/blank-1学会は上…

マリヤンの本を追って──帝国の書物ネットワークと空間支配

日比嘉高「マリヤンの本を追って──帝国の書物ネットワークと空間支配」、河野至恩・村井則子編『日本文学の翻訳と流通──近代世界のネットワークへ』勉誠出版、2018年1月12日、pp.243-259 【概要】 第二次世界大戦以前の、内地外地を結んだ書物流通網は、どの…

本年、新人小説月評(文學界)を担当します

今年一年、『文學界』の新人小説月評を担当することになりました。公私ともに、いろんな意味で、いま/今年これをやるのかよ俺は的な思いが去来しますが、せっかく与えられた貴重な場、貴重な誌面です。しっかりと全力で、現代作家の最前線の言葉に向き合お…

「フェイク・ニュースとポスト真実の時代」(名大アゴラ第12回セミナー)

FacebookとTwitterでは紹介していたのだけれど、こちらには記載するのを忘れていました。明後日土曜日12月16日15:30~、@名古屋大学です。2017年の流行語大賞にもノミネートされた(笑)2語をめぐってお話しします。ご関心ある方は、ぜひ。「フェイク・ニ…

学会向け批評記事のウェブ先行公開は、愚挙なのか

学会印象記を先行公開して叱られまして 少し前にこういう記事を書きました。hibi.hatenadiary.jp学会外の人に少し説明すると、日本近代文学会(近現代日本文学研究についての最大の学会です。会員数約1600人)には「会報」という冊子媒体があります。これに…

だれが小学生の作文を改ざんしたのか:検閲、震災、虐殺、発禁本

きのう目に入って、読ませてもらった id:Vergil2010 さんの記事。興味深かったです。 vergil.hateblo.jp 読んでいて「おっと!?」と思うところがあって、そこを起点にするともう少し深掘りできそうだったので、ざっと調べてみました。考えてみた主なポイン…