日比嘉高研究室

近況、研究の紹介、考えたこと

取材協力「「ポスト・トゥルース」の危うさ」(毎日新聞)

毎日新聞』夕刊 2017年1月30日の以下の記事に、取材協力をしました。

特集ワイド
「ポスト・トゥルース」の危うさ 「真実」は二の次…日本は無縁と言えるか

http://mainichi.jp/articles/20170130/dde/012/040/002000c

『読売新聞』書評欄 掲載(『文学の歴史をどう書き直すのか』)

本日(2017年1月29日)の『読売新聞』書評欄で、拙著『文学の歴史をどう書き直すのか』が取り上げられました。安藤宏さんの書評です。ありがたいことです。

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本の紹介 『〈変態〉二十面相』『石川啄木論攷』『エジプト人モーセ』

〈変態〉二十面相――もうひとつの近代日本精神史 | 六花出版honto.jp


昨年頂戴していながら、紹介し損ねていた論文集。お送り下さった方々、ありがとうございました、そしてごめんなさい。
〈変態〉という今や英語にまでなって抜群の知名度を誇るこの言葉の、近代における文化誌を考えた論文集。『メタモ研究会」というメタモルフォーゼ(変態)について研究した研究会の報告集でもある。
かつては真面目な学術用語──たとえば「変態心理学」など、逸脱的な心理・性欲を考えるための術語だった──であった「変態」を、いたってまじめに考究している。が、たぶんやっぱりちょっと、いやかなり楽しんでいる。そもそも書名が可笑しい。ならんだ部題も章題も可笑しい。変態と向かい合う、膨張する変態、変態する人、霊術家は変態か、三島由紀夫──とてつもない変態、などなどw
変態のエキスパート、あちがう、変態研究のエキスパート竹内瑞穂氏の「〈変態〉を学ぶ人のために」という文献紹介も付されている。



www.izumipb.co.jp

田口道昭さんより頂戴する。全24章、680ページを超える大著である。

石川啄木論だが、歌論ではなく、主軸は日本の自然主義との関係や、著名な評論「時代閉塞の現状」論(第二部すべて)など、彼の思想やその水脈、同時代市長との関連の考察に主軸が置かれている。私自身も関心がある、自然主義評論や、渡米熱の問題、明治末の「時代閉塞」、大逆事件、朝鮮への意識と伊藤博文などについての考察が並ぶ。どれも質がすごく高い。

博士論文前後に、私は日本の自然主義の文芸評論とか青年思潮とかの問題に深入りしていていろいろ読み漁ったののだけれど、そのとき時代の中で抜群の感度を示していたのが、石川啄木と魚住折蘆だった。という次第で、啄木は私にとって超リスペクトな批評家だ。田口さんの論文は、この啄木を論じるときに、よく参照させていただいていた。角度も切れるし、実証性という点での信頼度も高い。日系移民を考えるようになって、渡米熱経由で石川啄木に再会したときにも、やっぱり読んだ論文は田口さんのものだった。

その田口さんの論考が、一冊になったことを喜びたい。今後の啄木論は、この一冊を間違いなく無視できないはず。

巻末に「石川啄木略年譜・執筆評論・同時代文学年表」という三段組みの年表があるけれど、コンパクトながら地味にすごい。さすが。索引も充実です。



honto.jp

訳者の安川晴基さん(いま嬉しいことに同僚)から頂戴する。現代の記憶論の代表的存在ヤン・アスマンの代表作の一つの翻訳である。

歴史の継承、とくに近代史の批判的継承を失敗しつづけているこの国の現在において、記憶とどう向き合うか、記憶をどう論じるのかは、たいへん重要な課題であると私はかねがね思っている。釜山にもう一人増えてしまったあの少女像のことを考えるにつけても、過去の記憶がどのように現在的な布置と抗争の中で集合的に編成されつづけるのかは、痛みをもって了解されるはずである。

というわけで記録論は大事である。安川さんはドイツ文学・文化の研究者で、ドイツ系の記憶論の前線を走っている研究者で、この前も岩波の『思想』の特集で中核にいたと記憶する。今回の訳書は、ヤン・アスマンによる記憶史の実践例。ヨーロッパでエジプトがどのように想起されてきたのか、の歴史である。第1章に「記憶史は、歴史に応用された受容理論と定義することができるかもしれない」(p.26)とあって、はっとさせられる。歴史的事実としてのエジプトを追うのではなく、それに向かって生み出された言説の葛藤にこそ注目し、その言説の歴史の布置の変遷に目を凝らす。知の考古学的な手つきだけれど、やっぱりミシェル・フーコーの名前も出て来る。そうした探究によって、この本が追求しているのは、安川さんの解説によれば、一神教の暴力性、つまり原理主義の問題だという。過去のことを考えているようで、やはり現代ど真ん中なわけだ。

巻末に安川さんの分厚い解説がついており、アスマン夫妻の記憶論についても見取り図が示してあってありがたい。翻訳は、ほんとうにたいへんだったと思う。エジプト論ですもん。。。

「「ポスト真実」にどう向き合うか」『しんぶん赤旗』(インタビュー)

取材協力しました。
「「ポスト真実」にどう向き合うか」『しんぶん赤旗2017年1月11日(水)、焦点・論点欄でのインタビューです。
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全文はこちらで読めます。
2017焦点・論点/「ポスト真実」にどう向き合うか/名古屋大学大学院准教授 日比嘉高さん/正確な事実を伝え続けていく 届く言葉を届く経路と方法で

いただいた本とCDを紹介

「サークルの時代」を読む 戦後文化運動研究への招待

honto.jp

お送り下さった編者のみなさん、執筆者の方々、ありがとうございました。
戦後のサークル運動を考える、分厚く、そして熱い論文集。道場親信さんのご遺著の一つでもある。全10章+コラム11本という大部の構成です。詩など文学系が多いですが、美術や幻燈もあり、ガリ版印刷など出版文化についてのコラムもあります。地域も大阪、京浜、長崎など多岐にわたりますし、交差する横軸としても朝鮮戦争や在日朝鮮人、原爆、(結核ハンセン病など)療養所など興味深い補助線が多いです。
巻末の参考文献、「文献案内」、「戦後サークル文化運動略年譜」なども、この分野について私は知識が少ないので、ありがたい。
序章でチラリと課題のひとつとして上げられていたけれど、戦前の左翼系の運動とのつながり/断絶は、頭を整理するためには気になるところ。これからじっくり各論を読んで勉強してみます。
名大の学生たちを見ていても思うけれど、「運動」とか「コミュニティ」とか「共同体」とか「療養所」とかいう、ある種の集団の動態や輪郭を考える指向ってのが、今の研究状況の中で、一定数ある気がしている。きっと私たちが置かれている「現在」のあり方と関係しているのだけれど、まだしっかり言語化はできていない。

村上春樹論──神話と物語の構造

www.books.com.tw

著者の内田康さんから頂戴する。感謝!
村上の中長篇についての作品分析を重ねながら、抽出可能な神話や物語の構造を考えたものとなっている。終章にそれが整理されているが、「オルフェウス型[イザナキ型]」「イアソン型」「テーセウス型」「オオクニヌシ型」などの構造的類型を提示し、それに過去・現在・未来の〈喪失〉の三層構造や、王殺し・父殺し、女をめぐる物語・男をめぐる物語が交差して考えられていく。
詳細な目次はリンク先参照。
台湾での出版なので、日本国内ではやや入手しにくいかもしれない。

ライトノベル・フロントライン 3

honto.jp

大橋崇行さんより頂戴。ありがとうございます。
シリーズも3冊目。この業界については素人同然の私には、とにかく勉強になることばかり。今回は第2回ライトノベル・フロントライン大賞の発表とそれに関係する選評が掲載されていて、ははーそういう傾向ですか、と知った気持ちになれる。もう一つの小特集、「メディアミックスの現在」もよい。ノベライズ、アニメーション、作家、コンシューマーゲーム、音楽・声優、パソコンゲームと並ぶ。

ほかに山中智省さんの「〈ライトノベル雑誌〉研究序説」、茂木謙之介さんの「〈皇族萌え〉とモノガタリ」など、面白そうな個別論考も並ぶ。

やっぱりここは現代小説/文化論の一つの前線ですわね。


Yokohama, California

ヨコハマ、カリフォルニア

ヨコハマ、カリフォルニア

日系を中心としたアジア系アメリカ人のグループ「ヨコハマ、カリフォルニア」の同名のアルバム(の復刻+ボーナストラックス)。ライナーノートの翻訳と解説をなさった神田稔さんから頂戴する。バンド名、アルバム名は、著名な日系作家のトシオ・モリの同名の短編小説集(1949)にちなむ。原版は1977年に自主制作で出た。アフリカ系、アジア系などアメリカのマイノリティ・グループの対抗文化運動の一部だったといえるのだろう。

アルバムの冒頭にこうある。「わたしたちが歌で表現しようとしたのは、アジア系アメリカ人の歴史、わたしたちのコミュニティーが抱える現在の問題、そして将来に向けた希望である」(神田さん訳)

歌詞とその解説(メンバーたち自身が書いている)を読むと、強制収容など日系人の歴史だけでなく、フィリピン系のコミュニティの話や、日本への原爆投下にかかわるものなど、彼らのアンテナの横への広がりも見える。

トシオ・モリの描いた第二次大戦以前の日系コミュニティ、ヨコハマ・カリフォルニアのフォーク・ソング、重ねられる記憶と表象を、2017年の私たちはどう聞き、読むか。神田さんの詳細な解説も必読です。

謹賀新年

あけましておめでとうございます。

今年の目標:

  • 健康と体力は大事だよ
  • 粗製濫造せぬよう自戒
  • デジタル・ヒューマニティーズ関係の勉強をぼちぼち始めたい
  • 書を捨てなくてもいいけど、街に出よう
  • 久々に米国の日本文学系の学会に行きたい

ところで、だんだんこのブログの性格も変わってきています。ブログと、Facebookと、Twitterを併用しているので、日常の無駄話や、どうでもよい駄弁は、Facebookの方に書いています。こちらのブログは、ときどきBLOGOSに転載されたりすることもあって、告知と宣伝、そして議論の記事、というのが主な内容になってます。

とはいえ、肩肘張らず、気楽に、書きたいことを書こうと思っています。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

「ポスト真実」TOKYO FM TIME LINE

今日はこれです。19:20ごろから。
「世界に広がる「ポスト真実」に対抗する手段」。ナビゲータは古谷経衡さん。